おとなになる前に子宮頸がんワクチンを!
「知らなかった」と後悔しないために

・ワクチンで予防できる「がん」があります。

・ワクチンの助成を受けられる年齢に注意が必要です。

子宮頸がんとヒトパピローマウイルス

がんの中にはウイルス感染が関係するものがあることをご存じでしょうか。例えば、B型やC型の肝炎ウイルスは将来の肝細胞がん発症につながることがわかっています。

子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)との関連が深いとされています。このウイルスは非常にありふれたウイルスで、多くの種類があります。皮膚にイボを作るウイルスもこの一種です。

HPV(ヒトパピローマウイルス)のうち、子宮頸がんに関係するウイルスは高リスク型と言われ、HPV16型、18型などが挙げられます。こうしたウイルスは主に性交渉で感染しますが、感染しても症状はありませんので、気づきません。性交経験のある女性の半数以上が感染するともいわれますが、多くの人では感染しても自然に排除されるようです。しかし、中には排除されず、5〜10年以上たってから異形成(がんの前段階)を生じ、さらに、がんに進んでしまう場合があります。

厚生労働省では、子宮けいがんワクチンの安全性について特段の懸念が認められないことが確認されたことから令和3年11月26日にHPVワクチン接種差し控えの状態を終了しました。厚生労働省のサイトに情報が掲載されていますので、以下もご参考ください。

<厚生労働省ページに移動します>
ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~
HPVワクチンに関するQ&A

 

子宮頸がんの罹患者数と罹患年齢分布

子宮頸がんは現在、日本では年間1万人以上が新たに診断され、亡くなる方は年間3000人近くに及んでいます。一般にがんは高齢者の病気というイメージがありますが、子宮頸がんは20代から増加し、40代でピークを迎えます。特に若い人が子宮頸がんを発症すると、その後の人生に大きな影響を受けてしまいます。

 

日本での子宮頸がんの年齢別の罹患率(2019年)

― 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)より ―

 

子宮頸がんワクチン

現在、世界で接種が進められている子宮頸がんワクチンというのは、高リスク型HPVに対するワクチンです。これによってHPV16型および18型をはじめとする高リスク型HPVの感染とそれに伴う子宮頸部の異形成を予防する効果が示されています。感染する前に打たないと効果がありません。もちろん、このワクチンだけで全ての子宮頸がんを予防することはできませんので、がん検診を受けることも大切です。

子宮がん検診の説明はこちら>>>

このワクチンの接種後に、全身の激しい疼痛(“とうつう”と読み、痛みのことを言います)やふらつき、歩けなくなるなどといった症状が出る人がみられ、一時、日本では接種しない方がいいのではという流れになりました。その後、ここ名古屋市で詳細な調査が行われ、こうした症状は接種の有無に関係ないことが証明されました。ただし、このワクチンは筋肉内注射で、インフルエンザなどのワクチン(皮下注射)よりも深い部位に打ちますので、注射時の痛みを感じやすいことはあるようです。

名古屋市が行なった調査の結果は、市のホームページでも公開されています(名古屋市子宮頸がん予防接種調査回答集計結果PDF)。接種なしは1万人ほど、接種ありは2万人ほどの方にご協力いただいています。症状に関する結果をグラフにしてみました。

 

名古屋市の子宮頸がんワクチン費用助成

現在、名古屋市では、子宮頸がんワクチンの費用助成を行っておりますので、該当する方は無料で接種できます。

対象は、次に該当する方です。
(1)名古屋市に住民登録がある方
(2)小学校6年生から高校1年生相当年齢の女子(令和5年度は、平成19年4月2日から平成24年4月1日生の方)

(注)平成19年4月2日から平成20年4月1日生の方は、通常の接種対象の年齢(小学校6年生から高校1年生相当)を超えても、令和7年3月31日まで接種できます。

このワクチンは3回の接種が必要ですが、3回の接種完了までに半年間程度を要します。助成の期間を超えてしまうと自費になり、1回の接種ごとに1万5千円ほどかかりますので、特に高校1年生相当の方はご注意ください。

名古屋市の子宮頸がんワクチンキャッチアップ接種(過去に接種できなかった方への救済措置)

子宮頸がんワクチンキャッチアップ接種とは、定期接種の機会を失った方に対する公費接種で、令和4年4月1日から令和7年3月31日期間限定の措置のことをいいます。
名古屋市に住民登録があり、1997(平成9)年4月2日から2008(平成20)年4月1日までに生まれ、ワクチン3回接種を完了していない方は、公費(自己負担無料)で接種を受けることができます。これは2025(令和7)年3月末までの制度ですので、ご注意ください。

特にご注意いただきたいのは、キャッチアップ接種を受ける方は最大3回の接種が必要になることです。
3回の接種には6か月間かかりますので、接種スケジュールを考えると、遅くても2024(令和6)年9月までに1回目の接種を始める必要があります。接種希望の方はくれぐれもご注意ください。
過去に接種したワクチンの種類や回数、時期については母子健康手帳などで確認してください。どうしても不明の方は、ご相談ください。

名古屋市の子宮頸がんワクチンキャッチアップ接種の対象者

対象の方は名古屋市から接種シールが届いていると思います。

接種シールは3回分届くと思いますが、実際接種する回数は、人によって異なります。
1.今までに全く子宮頸がんワクチンの接種を受けられていない方は3回接種の必要があります。
2.子宮頸がんワクチンの接種勧奨を中止する前に(平成25年6月より前に)、
(ア)1回接種が済んでいる方は、残り2回の接種が必要です。
(イ)2回接種が済んでいる方は、残り1回の接種で済みます。
これらはご自身の予防接種が記載された母子手帳をご確認くださると分かるはずです。
定期接種に含まれている子宮頸がんワクチンは2種類あります。
ご自身が何回接種されたかわからない方、どちらを接種したかわからない方、そもそも接種したかわからない方についてはご相談の上、どの子宮頸がんワクチンを何回接種するかご相談の上で決定し、接種していきます。

接種をご希望の方、接種についての相談をご希望の方は、お気軽にお申し出ください。

 

また、子宮頸がんワクチンと子宮頸がんについては、日本産科婦人科学会のホームページに「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」と題したページがあり、詳しく掲載されています。

このホームページは我が国の子宮頸がんワクチンの権威の先生方が書かれたもので、「全て書かれている」と言ってもよいと思います。日本産科婦人科学会のこのページの上の方にバナーが設置されています。
Part1: 子宮頸がんとHPVワクチンに関する最新の知識
Part2: 子宮頸がん検診の最新の知識
Part3: HPVワクチン最新情報 浸潤子宮頸がんの減少効果や9価HPVワクチンについて
などの文書が閲覧・ダウンロードできますのでご覧ください(別ウィンドウで開きます)。

このホームページ記載内容にいくつか補足します。
1.浸潤子宮頸がんの「浸潤」というのは簡単に言うと「進んでいる」ということです。浸潤子宮頸がんというのは初期ではなくそれよりも進んでいる(悪くなっている)子宮頸がんということです。

2.現在HPVワクチンは日本では3種類あります。

2価HPVワクチン:グラクソ・スミスクライン株式会社の「サーバリックス」のことです。これはHPV16型と18型の2種類のウイルス様粒子が入っています。

4価HPVワクチン:MSD株式会社の「ガーダシル」のことです。これはHPV6型、11型、16型、18型の4種類のウイルス様粒子が入っています。

9価HPVワクチン:MSD株式会社の「シルガード9(ナイン)」のことです。これはHPV6型、11型、16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型の9種類のウイルス様粒子が入っています。このシルガード9(9価HPVワクチン)は、令和5年4月から定期接種となります。通常は3回の接種が必要です。接種スケジュールは4価HPVワクチン(ガーダシル)と同じです。しかし、14歳までの方は2回の接種で済む場合もあります。キャッチアップ接種の方にもこのワクチンは使えます(3回接種です)。原則として、はじめに接種したものと同じものを3回接種しますが、途中で9価HPVワクチンに変えてみたい方はご相談の上でご納得されましたら、9価HPVワクチンに変更することもできます。

参考までに、既に欧州や米国など80以上の国と地域で、9~14歳までの2回接種が3回接種の代替用法として承認され、使用されています。海外では男性に対する用法もありますが、我が国では適用外であり、男性には接種できません。

3.HPV には、200 種類以上の遺伝子型(タイプ)が同定されています。子宮頸がんをはじめとするHPVに起因するがんから検出されるHPVをハイリスクHPVと言います。ハイリスクHPVには、HPV16,18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 66, 68 型が含まれます 一方、尖圭コンジローマなどの良性のイボから検出されるHPV をローリスクHPVと言い、HPV6, 11, 42, 43, 44型が含まれます。