生理不順とはどういったこと?

生理が遅れている、生理が予定よりも早く来た、などということがあると心配ですよね。こうした理由で当院を受診される方は少なくありません。そこで、生理(不順)とは何かと言うことになりますが、その前に、正常な生理とはどういうものかと言うところから話をした方がわかりやすいと思います。(お急ぎの方は、『生理不順(月経不順)の種類』からお読みください。)

生理(月経)とは

「生理」の医学的表現は「月経」です。月経は「通常、約1か月の間隔で起こり、限られた日数の中で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」のことを言います。この「通常、約1か月の間隔」を月経周期と言います。

月経周期とは月経開始日から数えて次の月経開始前日までの日数のことです。

生理(月経)の起こるメカニズム

  • 卵巣の中には卵胞というものがありますが、これが毎月発育してきます。その中の代表がどんどん発育して成熟し、中にある卵子を外に出します。卵子が卵巣の外に出ることを排卵と言います。
  • 卵胞の発育とともにエストロゲンというホルモンが分泌されて子宮内膜が厚くなってきます。排卵で卵巣外に出た卵子が卵管の中に入り、さらに、排卵に合わせて性交渉があると、精子が子宮の中を通って卵管に入り、卵子と受精して受精卵となります。それが発育しながら卵管内を移動して子宮内膜に着床して妊娠が成立します。排卵によって卵胞は黄体へと変わり、プロゲステロンというホルモンも分泌するようになります。これによって、子宮内膜がさらに変化し、受精卵が着床しやすくなります。いきなり妊娠の話になって驚かれたかもしれませんが、今回、これは本題ではありません。
  • 妊娠する予定のない場合は性交渉がない、もしくは避妊しているため、受精卵はできません。すると、黄体は2週間ほどで衰えて、ホルモンを分泌するという役割を果たせなくなってきます。こうして、エストロゲンとプロゲステロンが少なくなるわけですが、それを合図に、妊娠のために準備してきた子宮内膜が不要となって剥がれ落ちます。これが月経なのです。つまり、毎月妊娠のための準備を繰り返して、妊娠しなかった結果として生理(月経)がくるということです。

生理(月経)周期とは、卵胞の発育に必要な時間と、排卵し黄体が機能を続ける時間の合計になります。もちろん体内で起こることですので多少の誤差範囲はあります。具体的な日数で言いますと、生理(月経)周期の正常範囲は25〜38日となり、周期日数の変動は6日以内です。ですから「約1か月」となるわけです。

生理不順の種類

生理不順の種類:生理(月経)が予定よりも早くくる頻発月経

生理(月経)が予定よりも早くきてしまうのは頻発月経(ひんぱつげっけい)と言います。上記の定義に当てはめますと月経周期が24日以内の状態です。生理的に(つまり異常がなくて)短くなったということもあると思いますが、黄体機能不全と言って黄体の機能が低下した場合もあります。また、排卵がうまく行われていない可能性もあります(この場合は不正出血(不正性器出血)の範疇に入るかもしれませんね)。

生理不順の種類:生理(月経)が予定よりも遅くくる希発月経

生理(月経)が予定よりも遅くなってしまうのは希発月経(きはつげっけい)です。月経周期が延長して39日以上3か月以内で発来した場合を言います。3か月以上月経が来ないのは無月経(むげっけい)と言います。無月経をそのままにしておくと子宮や子宮内膜の萎縮を起こして将来の妊娠にも影響が起こりますので、この場合には必ず受診してください。

生理不順の種類:正常な生理的無月経

無月経の中には生理的無月経というのがあります。これは初経以前(まだ月経が始まる前です)、閉経以降、妊娠、産褥、授乳期の無月経のことを言います。これは正常なものです。

生理不順の種類:原発無月経

余談ですが、初経は11〜12歳頃が多いです。15歳以降で始まるものを遅発月経(ちはつげっけい)、18歳で初経がないものを原発無月経と言います。16歳になっても初経を迎えていない場合には、一度調べてみても良いかもしれません。

生理不順の種類:早発閉経と遅発閉経

閉経については50〜51歳くらいが多いようです。40歳未満で閉経してしまうのは早発閉経と言って異常です。55歳以降になっても閉経にならないものは遅発閉経と言います。

生理不順の診察と治療

月経が順調に来ないとか、全く月経が来ない(無月経)場合には、原因を調べていくことになります。部位別に言うと、子宮に原因があるのか、卵巣に原因があるのか、脳の下垂体に原因があるのか、脳の視床下部に原因があるのか、そのほかの内分泌異常があるのかと言ったことを調べていきます。治療は判明した原因に対して行われますが、女性ホルモンを使った治療を行うこともありますし、漢方薬を使うこともあるでしょう。

受診前に皆さんにしていただけることは、基礎体温をつけることです。基礎体温のつけ方については「不妊症」のページに書きましたので、ご参照ください。

ただし、基礎体温をつけていないと受診できないと言うわけではありません。心配なことがありましたら遠慮なく受診してみてください。お話を伺うだけでもわかることがありますし、可能であれば内診や超音波検査を行います。それによって子宮の形に異常がないかどうか、卵巣が腫れていないかといったことがわかります。形に異常があるかどうかがわかるだけでも、原因の解明に一歩、近づいたことになります。

日常生活で生理不順と向き合うために

生理不順(月経不順)には、すべての方に当てはまるわけではありませんが、ご自身でできることで改善に向かうこともあります。

1.規則正しい生活をする

やはり早寝早起きがいいようです。7時間は睡眠時間を取りたいですから、夜11時には眠り、朝6時に起きるというのが理想でしょう。寝る直前にスマートフォンの画面を見ますと目が覚めて眠りにくくなるので、避けましょう。夜勤など仕事上、不規則な生活を余儀なくされる方はご相談ください。

2.ストレスを避ける

これも大事です。生活上のいろいろなストレスは体の変調をきたしやすいです。学校での生活や、職場での人間関係、結婚、子育て、親の介護など、女性の活躍の場が増えるにつれて残念ながらストレスも大きくなっているようです。避けられないストレスがあることも事実ですが、無月経で治療を要することになっても、ストレスと上手に付き合うことで、後に月経が正常化する場合もあります。

3.適度な運動

適度に体を動かすのはストレスの発散にも良いですし、自律神経にも良い影響があります。ただ、運動部などであまりに激しい練習をされていると、消耗性の無月経になってしまいますので、注意が必要です。過剰なダイエットでも同様なことが起こり得ます。

繰り返しになりますが、月経が順調に来るようになってから40歳頃までの間は、月経が3か月間ないと「無月経」であり、この場合には受診をお勧めします。

ご自身でやれることをやるのは大事ですが、あまり悩んでいても、かえってストレスになります。心配なことがありましたら、ぜひ、専門家にご相談ください。一緒に考えていきましょう。

!!!まずは悩まず相談を!!!